永井忠孝『英語の害毒』が示す日本の英語教育の愚かさ

この記事を読めば

 

  • 英語学習の意味が分かります。
  • 英語を頑張ろうという動機の確認ができます。
  • 英語教育で迷うことがなくなります。

 

私は大学で英語を教えている現場の人間です。

基本的には英語を学ぶこと・教えることは素晴らしいと考えています。

 

「しかし、本当は…」

 

と胸の奥にある、日本の英語教育にモヤっとするところもあります。

そこで

 

 

この本は、そのモヤっを代弁してくれています。

全英語教育者、学習者に存在を知っていただきたい本です。

日本はとんでもないことになるかもしれない。という危機感です。

今までイギリスに植民地化された国々が、どのような思いを持っていたか。

そのような歴史や思想は無視するかの如く進む

 

  • 「コミュニケーション」主義
  • 実践英語
  • 小学校英語

 

これらによって日本は侵されてしまいます。まず本がどのようなものかから見てみましょう。

『英語の害毒』構成と内容

まずは本の内容を示す目次の紹介です:

  1. 英語の誤解:英語は本当に必要か
    1. 仕事に英語は必要か
    2. 企業は語学力を重視していない
    3. 英語は国際語であり続けるか
    4. 英語の地位を脅かす中国
    5. 機械翻訳は役に立たないか
    6. 実用英語の英語学習はもう必要ない
  2.  英語の幻想:どんな英語をどれだけ学ぶべきか
    1. 小学校英語の最終目標会話言語と学習言語
    2.  本当のバイリンガルはいくらもいない
    3.  「ネイティブ」に習いたい
    4.  なまりに惑わされるな
    5.  二級市民でいいのか
    6.  世界で通じるニホン英語
    7.  日本の常識、アジアの非常識
    8. 実用品かファションか
  3.  英語の損得:日本人はなぜ英語が好きなのか
    1. 金銭的なメリット
    2.  有形無形の限りない恩恵
    3.  かたよる世界観
    4. アメリカ目線の日本人
    5.  白人しか得しないシステム
    6.  戦略としての英語普及
    7. GHQとCIAの影響力
  4.  英語の危機:日本が英語の国になったら
    1. TPPの本当の恐ろしさ
    2.  理想は日常会話程度の英語力
    3.  経済界の後押し
    4.  直接教授法の流行
    5.  アメリカの意向を代弁する人たち
    6.  社内公用語化という布石
    7.  なぜ日本は格差社会になったのか
    8.  エリート教育としてのゆとり教育
    9.  個性重視が「夢追い人」を生む
    10.  日本が乗っ取られる?
    11. 外国人の進出ははじまっている
  5.  英語教育への提言
    1. 読み中心の原則
    2.  小学校英語の停止
    3.  母語話者至上主義からの脱却
    4.  他言語教育のすすめ
    5.  みんなが三つの言葉を学ぶ
    6.  学習言語は自分で選ぶ
    7. 日本に固有の言語を知る

この目次を見れば大体どんなことが言われているかわかります。

以下は読んで考えた私の考察です。

考察:英語はいらない日本

現役大学の英語教員としていうのはおかしいと思います。

ですが、日本では英語はいりません。

必要ないです。一部の人や状況を除きますが。

というか日常で英語使いますか?

使わないです。

日本で英語使う必要が出てきてしまうのはまずい状況です。

英語が必要な日本だとどうなる

英語が必要。

つまり、英語がないと生活の支障が出る。仕事がない。

これで「英語格差」が生まれます。

「英語格差」で給料が変わる、つまり「所得格差」がでてしまう。

小学校英語?

これを進めるかのように、国は小学校英語を教科化しました。

テストをして、成績に加えたのです。

小学校から「英語格差」が生じます。

お金のある家庭は、子供のころから海外留学させ、英語にならせようとします。

日本語よりも英語圏の価値観を重視させてしまいます。

意味のない「コミュニケーション」

この流れを、少しずつ変えてきて今でも英語教育界でもてはやされているのが

 

コミュニケーション

 

これです。

これは私が大学生の頃から言われています。

なので少なくとも20年はずっと言われているでしょう。

薄っぺらな「会話中心」英語

ところがこんな英語、いらないです。

少なくとも学校教育(30-40人クラス)では薄っぺらです。

ネイティブ教員が40人クラスでコミュニケーション教える。

これでできるのは薄っぺらの日常会話です。

 

「こんにちは」

「趣味は何ですか」

「~はどうやって行けばよいですか」

 

雰囲気でこんなことをやります。発音を治すことなんてやりません。

民間の英会話スクールで、少人数~個別指導で、やりたい人がやればよいのです。

外国へのあこがれがうまく利用される

しかし、なぜか、文科省はじめ国の偉い人がこれを推奨して

「英語の4技能」

スピーキング力を図る

などと言って、英語教育を変えてきました。

海に囲まれた島国日本。

元々海外への憧憬はあります。

「英語が話せる」が過剰に持ち上げられてしまったのです。

(もちろん外国語学習や異文化理解は素晴らしい行為です)

コミュニケーション重視でどうなったか

このような英語教育でできたのが、発音ができない大学生たちです。

私が高校を卒業してから20年たちます。

2021年現在、大学1年生のtheの発音は

 

 

です。

英語の子供の歌を歌えません。リスニングできません。ディクテーション(書き取りできません)

これがこの20年の「コミュニケーション」英語教育の結果です。

結果は出ませんでした。

というかいらなかったのです。

何が必要か

こんな意味のないことやるより、学校でやるべきは徹底した詰め込みです。

研究者や本当に仕事で使う人は、これが将来役に立ちます。

学校40人を教える場合、予習で問題をやる、授業で解答解説、これが一番勉強できます。

ネイティブの授業で予習してこないで、その場で発言するのが

Yes I do

Hello

こんなことやっているのと、どちらが「勉強している」でしょうか。

このように国によって英語が不要にもかかわらず「過剰に」もてはやされてしまったのが「害毒」としての英語です。

 

この本で賛成できない部分

この本では「日本人英語発音」が良いとされていますが、それは反対です。

英語史の観点から言えば、1066年のノルマンコンクエスト以降、当時のフランス語と混じって現在の英語になっていったことは事実です。

イギリスの英語を中心とした発音は、学校教育で基本とすべきです。

ただ、学校英語ではアメリカが中心です。

さらにしっかりした発音指導をしていないのも現実ですが。

知識としての発音や文法はしっかりしなければいけません。

 

こちらの本と合わせて

施光久恒『英語化は愚民化』

こちらも読むとさらに理解が深まります。

 

施光久恒『英語化は愚民化』第4章:「自由」とは何か
施光久恒『英語化は愚民化:日本の国力が地に落ちる』(集英社 2015年)第4章の要点まとめと考察です。一部のエリートや教育者が提唱するグローバル化、ボーダーレス化。これは「自由」「平等」と逆行する愚策だ、ということがわかります。

 

以前こちらを書きました。

ぜひ読んでみてください。さらに理解できます。

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